化学メーカーのグローバルシェアを比較|就職・転職で見るべきポイントと注意点

化学メーカーのグローバルシェアを比較|就職・転職で見るべきポイントと注意点

「高い技術力を持つ化学メーカーへ就職したい」

「長期的に競争力を維持できる企業を見分けたい」

このように考えたとき、参考になる指標の一つが、各企業の製品が世界市場で占めるグローバルシェアです。

高いグローバルシェアを獲得するためには、技術力だけでなく、品質、コスト、生産能力、顧客との関係、知的財産、供給体制など、複数の競争力が求められます。

化学メーカーを就職・転職先として比較する際は、現在のシェアの高さだけでなく、そのシェアを長期間維持できているかを確認することが重要です。

本記事では、経済産業省の資料などをもとに、化学業界におけるグローバルシェアの見方と、企業選びに活用する際の注意点を解説します。

化学メーカーのグローバルシェア情報

化学業界の企業を比較するうえで、世界的に高いシェアを持つ製品があるかどうかは、重要な確認項目の一つです。

多数の競合企業が存在する市場で高いシェアを獲得している企業は、製品性能、品質、生産技術、コスト競争力などの面で、一定の強みを持っている可能性があります。

下の画像では、経済産業省の資料などをもとに、グローバルシェアの高い製品を持つ企業を整理しています。

※1 以下の経済産業省資料16ページをもとにリストアップしています。

経済産業省の製造業に関する資料はこちら

※2 掲載しているシェアは2010年時点の値であり、現在のシェアを示すものではありません。参考値として確認してください。

※3 企業のウェブサイトなどで得られる情報をもとに作成しています。

この一覧に含まれる企業であるかどうかは、化学業界の就職活動や転職活動における一つの判断材料になります。

ただし、グローバルシェアが高いという理由だけで、将来性や働きやすさまで判断できるわけではありません。

グローバルシェアが高い化学メーカーの強み

高いグローバルシェアを持つ製品には、競合他社が簡単には模倣できない強みが存在する場合があります。

代表的な強みとして、次のようなものが考えられます。

  • 独自の材料設計技術を持っている
  • 製造条件や品質管理に関するノウハウを蓄積している
  • 特許や営業秘密によって技術を保護している
  • 大規模な生産設備を保有している
  • 顧客から長期間にわたる認定を受けている
  • 世界各地へ安定供給できる体制を持っている
  • 競合企業よりも低いコストで製造できる
  • 市場の要求に応じて製品を改良し続けている

特に半導体材料、電子材料、自動車材料、高機能樹脂などでは、一度採用された材料を別の製品へ変更するために、顧客側で再評価や認定が必要になることがあります。

このような市場では、技術力に加えて、長年の供給実績や顧客との関係も競争優位につながる可能性があります。

一方で、シェアの高さが必ずしも高い利益率を意味するとは限りません。

市場規模が小さい場合や、価格競争が激しい場合には、世界シェアが高くても十分な利益を確保できないことがあります。

グローバルシェアだけで企業を選べない理由

基本的には、高いグローバルシェアを獲得するためには、一定の技術力や競争力が必要だと考えられます。

そのため、化学業界の企業選びをシェアの観点から考えることには意味があります。

しかし、高いシェアを持っているからといって、その企業が将来も安定しているとは限りません。

特に、技術革新が速い市場では、現在の主力技術よりも優れた技術が登場し、短期間で市場構造が変化する可能性があります。

既存製品で高いシェアを持っていても、新しい技術への移行に遅れると、競争力を失うことがあります。

蓄電池市場から分かるシェア変化の速さ

技術革新や設備投資の影響によって、グローバルシェアが大きく変化した事例の一つが蓄電池市場です。

日本企業は、かつて蓄電池市場で高いシェアを持っていました。

しかし、その後は中国や韓国などの企業が大規模な設備投資を進めたこともあり、日本企業の相対的なシェアは低下しました。

下の画像では、2015年から2020年にかけての電池関連市場の変化を整理しています。

※4 以下の経済産業省資料などをもとに作成しています。

経済産業省の製造業に関する資料はこちら

この事例から分かるのは、成長市場で一時的に高いシェアを獲得していても、その地位が自動的に維持されるわけではないという点です。

市場が急速に成長すると、競合企業による大規模投資、新規参入、価格競争、サプライチェーンの変化などが起こりやすくなります。

また、次世代技術が普及すれば、既存製品の強み自体が失われる可能性もあります。

2026年時点の蓄電池産業

経済産業省は、2026年6月に従来の「蓄電池産業戦略」を改訂し、「蓄電池・電源産業戦略」を公表しました。

新しい戦略では、グローバル市場における供給過剰やサプライチェーンリスクなど、蓄電池産業を取り巻く環境変化が示されています。

日本企業については、2035年までにグローバル市場における蓄電池関連売上高を2025年の3倍にする目標が掲げられています。

また、2030年頃の全固体電池の本格実用化も目標とされています。

経済産業省の蓄電池・電源産業戦略はこちら

このことからも、蓄電池市場では、現在のシェアだけでなく、次世代技術への研究開発投資や量産化能力を確認することが重要だと考えられます。

なお、2010年や2015年時点のシェアと、2026年時点の企業競争力は必ずしも一致しません。

過去のシェアは、その時点における技術力や市場での立ち位置を確認するためのデータとして活用する必要があります。

就職・転職ではシェアを維持した期間も確認する

グローバルシェアは重要な指標ですが、就職・転職で定量的な企業比較に使用する場合は、シェアを獲得している期間も確認する必要があります。

短期間だけ高いシェアを獲得した企業と、10年、20年にわたって高いシェアを維持している企業では、競争力の性質が異なる可能性があります。

長期間にわたってシェアを維持している企業には、次のような強みがあると考えられます。

  • 継続的に製品を改良している
  • 顧客との関係が強い
  • 製造ノウハウを蓄積している
  • 競合企業が参入しにくい市場を形成している
  • 原料調達から製造までの供給網を確立している
  • 世界各地に販売・技術支援体制を持っている
  • 市場変化に合わせて設備投資を続けている

技術革新が比較的緩やかな市場で長期間にわたって高いシェアを持つ企業は、安定した競争力を持っている可能性があります。

ただし、技術革新が少ない市場では、市場そのものが成熟・縮小している場合もあります。

そのため、「シェアが安定している」という情報だけでなく、市場規模や今後の需要もあわせて確認することが必要です。

化学メーカーのグローバルシェアを確認する方法

就職・転職先を比較する際は、企業が発表する「世界シェア第1位」という情報だけを見るのではなく、その数値の前提を確認することが重要です。

シェアの対象範囲を確認する

同じ世界シェア第1位でも、対象となる市場の区分によって意味が異なります。

例えば、次のような条件が付いている場合があります。

  • 特定の用途に限定した市場
  • 特定の地域に限定した市場
  • 特定の製品グレードに限定した市場
  • 自社の定義によって区分した市場
  • 生産能力ベースのシェア
  • 販売数量ベースのシェア
  • 売上高ベースのシェア

市場の定義が非常に細かい場合、世界シェア第1位であっても、市場規模自体は小さい可能性があります。

シェアの調査時点を確認する

企業の採用サイトや統合報告書に掲載されているシェアが、何年時点のものなのかを確認します。

古い資料の数値が、その後も更新されずに掲載されている場合があります。

シェアを比較する際は、可能な限り同じ年度のデータを使用することが望ましいです。

シェアの情報源を確認する

シェアの根拠として、外部調査会社のデータが使用されているのか、企業自身の推計なのかを確認します。

企業の公表資料では、次のような表現が使用されることがあります。

  • 当社推定
  • 外部調査機関調べ
  • 販売数量をもとに算出
  • 生産能力をもとに算出

「当社推定」と記載されている場合は、他社の資料や公的資料と定義が異なる可能性があります。

市場の成長性を確認する

高いシェアを持っていても、市場自体が縮小している場合は、売上や利益の成長につながらない可能性があります。

企業研究では、次の点をあわせて確認するとよいでしょう。

  • 対象市場の成長率
  • 競合企業の設備投資
  • 代替技術の開発状況
  • 原材料価格の影響
  • 主要顧客への依存度
  • 環境規制の影響
  • 製品の利益率
  • 研究開発費
  • 新規事業への投資状況

国内シェアとグローバルシェアの違い

企業のウェブサイトでは、国内シェアの高さが強調されている場合があります。

国内シェアも、日本市場における企業の強さを確認する重要な指標です。

しかし、国内市場が縮小している製品では、高い国内シェアを持っていても、事業全体の成長が難しくなる可能性があります。

一方、グローバルシェアが高い企業は、海外の需要を取り込める可能性があります。

ただし、グローバル市場では、為替変動、海外規制、地政学リスク、現地企業との価格競争などの影響も受けます。

そのため、国内シェアとグローバルシェアのどちらか一方だけで、企業の優劣を判断することはできません。

グローバルシェアの重要性をPPMで考える

コンサルティング会社のボストン コンサルティング グループが開発した代表的な経営分析手法に、プロダクト・ポートフォリオ・マネジメントがあります。

一般的にはPPM、またはグロースシェア・マトリクスと呼ばれています。

PPMでは、企業が持つ事業を主に次の2軸で分析します。

  • 市場成長率
  • 相対的市場シェア

市場成長率は、その事業分野の成長性や魅力度を確認する指標です。

相対的市場シェアは、最大の競合企業と比べて、自社がどの程度のシェアを持っているかを示す指標です。

高い相対的市場シェアを持つ事業は、規模の経済や経験の蓄積によって、コスト競争力を得られる可能性があります。

この考え方からも、企業の競争力を確認する際には、単なる国内シェアではなく、グローバル市場を含めた相対的な市場地位を見ることが重要だと考えられます。

ただし、PPMだけで事業の将来性を判断することはできません。

技術力、利益率、顧客構成、参入障壁、法規制、ブランド力など、相対的市場シェアだけでは表せない要素もあります。

PPMやBCGの戦略コンセプトについて詳しく確認したい場合は、以下の書籍が参考になります。

BCG戦略コンセプト

就職・転職でグローバルシェアを見る際の注意点

グローバルシェアは、化学メーカーの技術力や競争力を比較するための有力な指標です。

しかし、就職先や転職先を選ぶ際は、次のような情報もあわせて確認する必要があります。

  • シェアを持つ製品の市場規模
  • 過去から現在までのシェア推移
  • 製品の利益率
  • 市場の成長性
  • 代替技術が登場する可能性
  • 競合企業の設備投資
  • 主要顧客への依存度
  • 研究開発費と設備投資額
  • 海外売上高比率
  • 事業ポートフォリオ
  • 平均年収
  • 勤務地
  • 職種
  • 福利厚生
  • 交代勤務や夜勤の有無
  • 人員削減や事業再編の状況

世界シェア第1位の製品を持っていても、その製品が企業全体の売上や利益に占める割合が小さい場合があります。

反対に、世界シェア第1位ではなくても、複数の事業で安定した利益を得ている企業もあります。

グローバルシェアは、企業を比較するための一つの指標として活用することが重要です。

まとめ|高いシェアを長期間維持できるかを確認する

化学メーカーのグローバルシェアは、企業の技術力や競争力を確認するための重要な指標です。

高いシェアを持つ企業は、製品性能、製造技術、品質、コスト、供給体制などで、一定の強みを持っている可能性があります。

一方で、蓄電池市場のように技術革新や大規模投資によって、短期間で企業のシェアが変化する市場もあります。

就職・転職で企業を比較する際は、現在のシェアだけでなく、シェアを維持している期間、市場の成長性、代替技術、利益率まで確認することが重要です。

特に、長期間にわたって高いグローバルシェアを維持しながら、研究開発や設備投資を継続している企業は、安定性と競争力の両面から有力な候補になる可能性があります。

ただし、グローバルシェアだけで就職先を決めるのではなく、年収、勤務地、仕事内容、働き方、事業構成なども含めて総合的に判断してください。

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