『JSR』への就職/転職に向けた企業研究

 今回は、JSRについて調査をしました。簡易スクリーニングでは、化学業界売上高ランキング50位まで+石油化学業界の中で第9位となっており、Topレベルとなっております。どの比較項目も標準以上であり、成長性、働きやすさ、安定性はその中でも特に高いレベルとなっております。
 また、売上対比の設備投資費の割合も、研究開発費の割合も高く、化工系(設備)にも化学系(研究)にもお勧めできる化学業界の企業です。やはり、投資がない状況での検討はやる気がでないものですからね。

★事業分野ごとの売上と営業利益の相関★
 JSRには、エラストマー事業、デジタルソリューション事業、ライフサイエンス事業、合成樹脂事業があります。エラストマー事業はENEOSに2021年に売却しております。また、2017以前は、デジタルソリューション事業、ライフサイエンス事業を多角化事業としてまとめており、2018年から2つに分けております。
 JSRの事業分野ごとに安定して儲かっているかどうかを定量的に比較し、JSRの戦略に関して深堀してみたいと思います。データは2015年からのみでしたので、2015年から事業分野ごとに比較します。
 文献(※1)より、安定して儲かっている事業かどうかは、売上と利益の相関を表す決定係数(R2)が0.7以上であるかが定量的な指標として紹介されておりますので、本記事もこれに習います。JSRは優秀で、合成樹脂事業以外はR2が0.8を超えており、エラストマー事業もデジタルソリューション事業もライフサイエンス事業も安定して儲かっております。
 多角化事業部門は一見、安定して儲かっていないように見えますが、デジタルソリューション事業とライフサイエンス事業に分かれた段階からは、安定しているため、問題ないと想定しております。売上と利益の傾きが異なる2つの分野が1つの分野にまとまってしまうと、一見安定していないように見える、、、これは今回まとめており勉強になりました。
 最初に記載した通り、エラストマー事業をENEOSに売ってしまいましたが、石油化学産業とはいえ安定しており、利益も出ていたので、売るのは早計だったような気がします。ただし、近年は売上をきちんとあげられておらず、赤字だったので怪しさはありましたが。。。
 投資の事業分野ごとの配分見直しについて詳細を見ていきましょう。

※1 参考文献: 「日米欧の化学会社はどんな事業戦略をとってきたか:今後は」

★設備投資費/研究開発費の配分見直し★
 研究開発費の事業分野ごとの割合変化に関して、2015年対比で2022年は、多角化事業部門(デジタルソリューション事業+ライフサイエンス事業)の割合はそこまでかわっておらず、エラストマー事業を売却した分(11% DOWN)、次世代の種まき”その他”の研究開発費(16% UP)が増えております。2015年の時点で、もともとエラストマー事業への研究開発費はそこまで多くなく、多角化への研究開発に舵を切っていたことが分かります。
 設備投資費の割合は2015年当時にエラストマー事業に60%強だったのが、2022年には売却済みですので、丸丸60%強がなくなっております。「マッキンゼー ホッケースティック戦略―成長戦略の策定と実行」によると、10年間で設備投資の50%以上を見直しているかどうかを成長する企業の1つの指標としておりますが、JSRはそのレベルに達しております。他にこの指標を達成しているのは化学業界の企業の中で、昭和電工(現レゾナック)ぐらいなものでしょうか。
 まとめると、JSRは現状に甘んじることなく、将来に向けてポートフォリオの転換をきちんと進めており、安定性、将来性は問題なしです。また、従業員の働きやすさもTOPレベルであるため、人気度の割にはオススメできる企業ですね。
 今後は、JICに買収されるとのことで、どうなっていくか楽しみですね。吉と出るか、凶と出るか。。。




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